フツーの仕事がしたい

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2010年 アメリカ合州国アーカンソー州 ホットスプリングス・ドキュメンタリー・フィルム・フェスティバル会場にて

① 国際映画祭で受賞

 

『フツーの仕事がしたい』は14ヵ国の海外映画祭で上映され、2009年開催のイギリスのレインダンス映画祭、アラブ首長国連邦のドバイ国際映画祭で、ベストドキュメンタリー賞を受賞しました。現在は大学や高校、労働組合や自治体等で教材としても活用されています。都留文科大学名誉教授の後藤道夫さんは「新入生には毎年『フツーの仕事がしたい』を見せている」と語ってくれました。これまでに150箇所を越える会場で上映され、1万2千人以上の方に観ていただいきました。

②  きっかけは「証拠映像」


2006年春、全日本建設運輸連帯労働組合(通称:連帯ユニオン)から、撮影依頼を受けます。依頼内容は「最長で月552時間も働いていた運転手が組合に加入した途端、会社関係者から組合脱退を強要されている。証拠映像を撮影してもらいたい」というものでした。会社関係者による暴力や恫喝、長時間労働の実態を取材し、短編『労働者は奴隷か!』(21分)にまとめ、組合内部で活用されます。交渉の最中には、荷主の関連会社前でも上映会が開かれました。事態を重く受けとめた会社側は、謝罪と賠償および労働条件の改善を約束し、争議解決へ向かいます。


③  長編映画『フツーの仕事がしたい』へ

 

短編『労働者は奴隷か!』を納品した時点で、連帯ユニオンからの依頼は終了していました。しかし「終わりです。さようなら」という気持ちにはまったくなれず、私は自費で取材を続けました。声もあげず、過労死ギリギリまで働き続けることは、現代日本において大きな社会問題です。小さな運送会社で起こった事件ですが、長編映画として編集し直すことで、幅広い客層に観てもらえる。個人加盟型の労働組合の重要性をダイレクトに伝える作品に昇華できると考え、制作費のカンパも広く呼びかけました。約30万円が集まりました。証拠映像からスタートした映像は、タイトルを『フツーの仕事がしたい』と改め、70分の長編映画へ生まれ変わります。2008年10月、東京・ポレポレ東中野を皮切りに全国の映画館17館で上映され、国際映画祭でも評価されました。

④ 社会問題を広げる可能性


深く接していなかった社会問題と向き合えることは、映像制作を行う私にとって大きな喜びです。本作は、運送業の労働現場から学び、自らのテーマとして咀嚼することによって制作することができました。このケースのように、いつでも長編映画を作れるものではありません。そうでなくとも、様々な現場で孤軍奮闘されている方々と出会い、精進していきたいと私は願っています。
労働問題に限らず、団体活動や市民運動の内部では共有されている問題が、世間ではまったく知られていない場合があります。常田高志監督作「タケオ ダウン症ドラマーの物語」のように撮り溜めた家庭用ビデオの映像や写真、録音物を再構成することも可能です。ご相談ください。